ピロリ菌
(ヘリコバクター・ピロリ菌)
とは?
ピロリ菌とは、「らせん」の形をした細菌です。正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。
ヒトに感染すると、強い酸性を示す胃酸を中和しながら、胃粘膜で生息を続けます。感染が続くと、胃粘膜での炎症を引き起こし、さらに長引くと慢性胃炎へと移行します。
また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんとの関連があることがすでに分かっています。
ピロリ菌に
感染するのはなぜか?
ピロリ菌の感染経路は、未だはっきりしたことが分かっていません。飲み水、食事などを介して、口から感染しているのではないかという説が有力です。
ピロリ菌は基本的に5歳以下での感染がほとんどであり、大人が新たに感染することはないと言われています。そのため、上下水道が整っていない時代に幼少期を過ごした、現在の50歳以上のピロリ菌感染率は70%以上にものぼると推定されています。
ピロリ菌感染と病気の関連性
ピロリ菌感染が持続すると、慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなどのリスクが高くなると言われており、その他、胃マルトリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病、胃過形成性ポリープといったさまざまな疾患との関連も指摘されています。
こういった疾患のリスクを低減させるためには、ピロリ菌の除菌治療が有効です。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査は大きく「胃カメラを使用する検査」と「胃カメラを使用しない検査」に分けられます。
胃カメラを使用する検査
迅速ウレアーゼ
試験
胃の中でピロリ菌が出す酵素「ウレアーゼ」に着目した検査です。胃カメラで採取した胃粘膜組織のウレアーゼ活性を利用して、感染の有無を調べます。
結果が出るまでの時間が短く安価とうメリットがありますが、除菌治療後の判定にはあまり向いていません。
鏡検法
胃カメラで採取した胃粘膜組織をホルマリンで固定し、顕微鏡でピロリ菌の有無を調べます。
培養法
胃カメラで採取した胃粘膜組織を培養し、ピロリ菌の有無を調べます。
胃カメラを使用しない検査
尿素呼気試験
ピロリ菌の出す「ウレアーゼ」は、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する作用を持ちます。この性質を利用し、特殊な尿素製剤を飲む前と飲んだ後で呼気を採取し、それぞれ測定する検査です。
患者様のご負担が少なく、短時間で、精度の高い検査です。
血中抗ピロリ菌抗体測定
採血した血液の中の抗ピロリ菌IgG抗体を調べ、判定します。
尿中抗ピロリ菌抗体測定
ピロリ菌に感染すると、身体の中で抗体がつくられます。尿からこの抗体の有無を調べ、ピロリ菌感染を判定します。
便中ピロリ菌抗原測定
便中のピロリ菌抗原を調べ、ピロリ菌感染の有無を判定します。
ピロリ菌を除菌する必要性
先述の通り、ピロリ菌感染は、慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんをはじめとする、さまざまな疾患のリスクへと影響します。
ピロリ菌陰性胃癌の発生率は1~3%程度と報告されています。またWHO(世界保健機関)によると、胃がんの80%はピロリ菌感染を原因としており、その除菌治療によって、胃がんの発症を30~40%減少させることができる、とされています。
ピロリ菌除菌の方法と流れ
ピロリ菌の除菌治療では、複数の薬を服用します。一回目の除菌治療を「一次除菌」といい、これにより約90%の症例で除菌が成功します。一次除菌が成功しなかった場合には二回目の除菌治療「二次除菌」が必要になりますが、二次除菌を受けた方のうち約90%が除菌に成功します。
一次除菌と二次除菌を合わせると、約98%の症例で除菌に成功することになり、成功率の高い治療と言えます。
一次除菌
「胃酸の分泌を抑制する薬」を1種類、「抗菌薬」を2種類、計3剤を1日に2回内服し、これを連続7日間継続します。
8週間後に、再度ピロリ菌検査を行い、除菌の成功・不成功を判定します。
二次除菌
2種類の抗菌薬のうち、1種類を違う薬に変更し、一次除菌と同じ用法・用量で服用します。
8週間後に、再度ピロリ菌検査を行い、除菌の成功・不成功を判定します。
もし二次除菌で除菌ができなかった場合には、三次除菌を行います。なお、二次除菌までは保険診療となりますが、三次除菌以降は自費診療となります。
ピロリ菌検査の費用
保険診療の場合
慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断された方、早期胃がんの治療後の方の場合には、ピロリ菌検査および除菌治療に健康保険が適用されます。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|
ピロリ菌検査 +除菌治療 |
約1,500 ~2,000円 |
約3,000 ~4,000円 |
5,000 ~6,000円 |
※目安金額です。
自費診療の場合
ピロリ菌 検査 |
胃カメラを使用する検査 | 迅速 ウレアーゼ 試験 (内視鏡) |
5,500円 |
---|---|---|---|
鏡検法 (内視鏡) |
13,200円 | ||
培養法 (内視鏡) |
6,400円 | ||
胃カメラを使用しない検査 | 尿素呼気試験(呼気検査) | 4,900円 | |
血中抗ピロリ菌抗体測定(採血) | 2,500円 | ||
尿中抗ピロリ菌抗体測定(尿検査) | 2,500円 | ||
便中ピロリ菌抗原測定 (便検査) |
2,900円 | ||
除菌治療 | 診察+除菌治療 1次除菌20,000円 2次除菌20,000円 3次除菌20,000円 |