炎症性腸疾患とは?
炎症性腸疾患とは、本来であれば外敵から身体を守ってくれるはずの免疫機能の異常によって、腸の細胞を攻撃してしまうことで炎症および腹痛・下痢・血便などの症状をきたす病気です。 炎症性腸疾患は大きく、潰瘍性大腸炎とクローン病に分けられます。いずれも厚生労働省より難病の指定を受けており、根治はごく稀なケースではありますが、治療によって症状をコントロールすれば、QOLを維持した生活を送ることが可能です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症および下痢・血便などの症状を伴います。症状の範囲・程度はさまざまであり、便に少量の血液が混じる程度のものから、1日20回以上もトイレに駆け込むようなものまで存在します。
重症化した場合には、ひどい潰瘍から穿孔をきたしたり、炎症の長期持続によって大腸がんを合併したりすることがあります。
クローン病
大腸・小腸での発症が多いものの、口から肛門までの消化管で炎症および腹痛・下痢・血便などの症状が起こり得る炎症性腸疾患です。
悪化すると、深い潰瘍や瘻孔、腸管の狭窄を起こすことがあります。
そのほか、消化管以外の皮膚・関節・眼などで症状が出現するケースも見られます。
炎症性腸疾患の
症状チェックリスト
潰瘍性大腸炎
- 下痢
- 血便
- 発熱、倦怠感
- 腹痛
- 体重減少
- 貧血
下痢・血便をはじめとし、大腸の炎症の程度に応じて、上記のような症状が見られます。
クローン病
- 腹痛
- 下痢
- 血便
- 発熱
- 体重減少
もっとも頻度が高いのは、腹痛と下痢です。
血便については、潰瘍性大腸炎の場合と比べると頻度が低くなります。
炎症性腸疾患の原因は?
炎症性腸疾患、クローン病の原因は、未だはっきりとは解明されていません。 ただ、さまざまな要因が重なり合うことで、発症へと影響しているものと考えられています。
潰瘍性大腸炎
遺伝的要因、環境要因、腸内環境要因などが挙げられます。
環境要因としては、砂糖を多く含む食べものの摂り過ぎ、食生活の欧米化などが関連しているものと考えられます。
腸内環境要因としては、腸内細菌の関与が考えられます。潰瘍性大腸炎の人は、健康な人とは異なる種類・量の腸内細菌を有しているとの報告があります。
クローン病
潰瘍性大腸炎と同様に、遺伝的要因、環境要因、腸内環境要因などが発症へと影響しているものと考えられます。
なお環境要因については、食生活の偏り・変化に加え、喫煙も何らかの関与があることが指摘されています。
炎症性腸疾患の検査と診断
症状の種類や程度などをお伺いし、血液検査、便の培養検査、大腸カメラ検査を行い、診断します。
X線検査(バリウム検査)、CT検査、MRI検査が必要な場合もあります。
当院では、消化器・内視鏡専門医である院長が、診察・検査・診断・治療を担当します。大腸カメラ検査においては、鎮静剤を使用し、ほとんど苦痛なく検査を終えることが可能です。また、下剤については、ご自宅で服用、もしくは、ご来院後に院内で服用も可能な体制を整えております。
炎症性腸疾患の治療
炎症性腸疾患の根治は極めて困難です。しかし、適切な治療によって症状をコントロールし、QOLを維持することは可能です。手術など、治療の内容によっては、提携病院をご紹介します。
潰瘍性大腸炎
薬物療法
免疫の過剰な働き・炎症を抑えるアミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節剤・免疫抑制剤・生物学的製剤などを使用します。
血球成分除去療法
薬物療法では十分な効果が得られず、症状が強く現れている場合に検討する治療です。
血液中から、過剰な働きを見せる白血球を取り除きます。
食事療法
症例によっては、特定の食べ物が症状を引き起こすことがあります。体質に合わないものを除去し、症状の改善を図ります。
手術
上記の治療で十分な効果が得られないとき、大腸粘膜に穿孔を起こしたとき、大腸がんを合併するリスクが高い場合には、大腸を摘出する手術が必要になることがあります。
クローン病
食事療法
小腸・大腸で炎症を起こしている場合には、絶食をして点滴を行ったり、栄養剤を経口投与することで、炎症部への刺激を避けます。
炎症がコントロールできている場合には、脂肪分・食物繊維の量を抑えた、バランスのよい食事を摂ります。
薬物療法
炎症や免疫の過剰な働きを抑える5-アミノサリチル酸製薬、ステロイド、免疫調節剤・生物学的製剤などを使用します。
手術・内視鏡的治療
炎症によって小腸・大腸が狭窄しているケース、腸壁の穿孔が認められるケースなどでは、手術が必要になります。
また、年齢・全身疾患によって手術が難しい場合には、内視鏡的治療によって、狭窄部を拡大する処置などが行われることがあります。