食欲不振とは?
食欲不振とは、本来であれば空腹を感じるはずの時間帯であるにもかかわらず、食欲が出ない状態を指します。通常、食後時間が経過すると血糖値が下がり、胃が収縮し、視床下部の摂食中枢が刺激されて空腹を感じます。この仕組みが何らかの原因によって障害を引き起こすことで、食欲がなくなってしまいます。
落ち込んでいるとき、疲労困憊しているときなどにも食欲は低下します。こういったケースでは基本的に食欲不振は一時的なものにとどまります。気分が晴れたり、疲れが取れたりすれば、再び食欲が湧いてきます。しかし、数日以上食欲が湧かないという場合には、その原因に関係なく(落ち込みや疲労であっても)注意が必要です。食欲不振で食欲がなくても、身体が食事を必要としていないわけではないためです。また、背景に心身の疾患が隠れている可能性があります。
数日にわたって食欲不振が続いているという場合には、お早めに当院にご相談ください。拒食症やうつ病などが疑われる場合には、専門の医療機関をご紹介します。
食欲不振の
症状チェックリスト
- 数日にわたって食欲がない状態が
続いている - 三食を摂っているが、
ごく少量しか食べられない - 食べようとすると気持ち悪くなる、
吐き気がする - 胃痛や胸やけなどの症状があり、
食欲が湧かない - 食欲不振があり、体重も減っている
- 食事の内容が偏っている
(あっさりしたものばかり食べるなど) - 食べてもおいしいと感じない
- 食事を摂っていないことにあとで気づく
食欲不振といっても、まったく食べられないものから、少量・特定の食べ物であれば食べられるというものまで存在します。
1つでも該当する場合には、お早めに当院にご相談ください。
食欲不振の原因は?食欲不振を引き起こす疾患
落ち込み、疲労などによって起こる一時的な食欲不振については、基本的にそれほど心配する必要はありません。原因が解消されれば、食欲も戻ります。飲みすぎた翌日の食欲不振も同様です。しかし、原因が上記のようなものであっても、食欲不振が続く場合には受診・治療が必要です。また食欲不振の原因となる疾患としては、以下のようなものが挙げられます。
逆流性食道炎
腹圧上昇につながる作業や習慣、加齢に伴う下部食道括約筋の機能低下、薬の副作用などを原因として胃酸が逆流し、食道粘膜で炎症を起こす疾患です。
胸やけや胃痛などの症状によって、食欲不振が起こります。また付随して、体重減少を起こすことがあります。
その他、げっぷの多発、酸っぱいげっぷ、胸痛、咳、声がれなどの症状も認められます。
胃・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染を主要な原因として起こる、胃や十二指腸の潰瘍です。
嚥下困難、胸やけ、吐き気などの症状によって、食欲不振が引き起こされることがあります。
その他、黒い便(タール便)、嘔吐、貧血、吐血などの症状も認められます。
胃がん
初期症状の少ない、胃に生じるがんです。
ある程度進行すると、胃痛、胃の不快感、吐き気などに付随し、食欲不振が引き起こされることあがります。
その他、嘔吐、下血伴う黒い便(タール便)などの症状も認められます。
ウイルス性肝炎
ウイルス感染を原因として起こる肝炎です。A型、B型、C型、D型、E型などがあります。
肝細胞が破壊され、食欲不振、倦怠感などの症状が出現します。
急性肝不全
急性肝炎が重症化し、肝機能が失われた状態です。
全身倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が現れます。
肝硬変
肝臓の慢性的な炎症によって、肝臓が硬く変性してしまった状態です。
むくみ、黄疸、腹部膨満感、食欲不振、倦怠感、脱毛、頻尿、手掌紅斑などのさまざまな症状が見られます。
膵臓がん
糖尿病、肥満、飲酒、喫煙などを原因として起こる膵臓のがんです。初期には無症状であるケースが少なくありません。
進行すると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、背中・腰の痛みなどが現れます。
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが正常に分泌されなくなる病気です。代表的なものに橋本病があります。
むくみ、悪寒、脱毛、便秘、生理不順、抑うつ、倦怠感などの症状に加え、食欲不振が認められます。新陳代謝が低下するため、食べていないのに太る、ということも起こります。
拒食症(神経性食欲不振症)
肥満に対する恐怖、痩せることへの渇望から、すでに低体重であるにもかかわらず無理な食事制限、意図的な嘔吐、下剤の常用などでさらに体重を減らそうとする病気です。
うつ病
食事を含めた通常の日常生活に興味・関心が持てなくなり、食べる量や回数が減ることがあります。
食欲不振の検査と診断
問診では、食欲不振がいつ頃どの程度現れたか、その後の経過、体重の経過、服用中の薬、既往歴などをお伺いします。その上で、血液検査、腹部X線検査、腹部超音波検査、胃カメラ検査などを行います。
当院では、嘔吐反射の起こりにくい経鼻内視鏡、ウトウトとした状態となり苦痛を和らげる鎮静剤を用いた胃カメラ検査を実施しております。
消化器・内視鏡専門医である院長が丁寧に診療いたしますので、ご安心ください。
食欲不振の治療
食欲不振の原因となる疾患が見つかった場合には、その疾患に応じた治療を行います。 その他、以下のような治療を行います。
点滴治療
脱水症状、栄養障害などが認められる場合には、点滴治療にて水分・栄養を補給します。
生活習慣指導
二日酔いなどによって頻繁に食欲不振を起こしている場合には、当然ながら身体によくありません。他の疾患の予防という意味でも、お酒を控えるなどの指導を行います。
また、精神的な落ち込みに付随してたびたび食欲不振が起こる場合は、ストレスとの付き合い方を改善する必要があります。
場合によっては、心療内科などの専門医療機関と連携し、治療を進めます。
薬物療法
症状によっては、制吐剤、整腸剤などのお薬を使用することがあります。